COLUMN
本人任せにせず、経験設計と面談で管理職候補を増やす
監修:株式会社キャリアバランス

女性管理職を増やしたい、女性管理職候補を育成したい、けれど候補者本人が前向きになりきれない。そうした相談でよく出てくる言葉が「ロールモデル不足」です。たしかに、自社の中に多様な管理職像が見えなければ、候補者は自分が管理職として働く姿を想像しにくくなります。ただし、ロールモデルを紹介するだけで女性管理職が自然に増えるわけではありません。
女性のキャリア、ロールモデル、管理職育成を考えるときは、本人の意欲だけでなく、経験付与、上司の期待の伝え方、管理職像の固定化、ライフイベントとの両立不安、職場風土まで含めて設計する必要があります。内閣府の令和7年版男女共同参画白書では、日本の管理的職業従事者に占める女性割合は2024年で16.3%とされ、諸外国に比べ低い水準であることが示されています。※1
- 女性管理職のロールモデル育成とは
- 女性社員に同じ働き方をまねてもらうことではなく、複数の管理職像、経験の積み方、支援の受け方を見える化し、候補者が自分なりの管理職像を作れるようにする育成設計です。
ロールモデル不足だけが問題ではない
女性管理職候補が増えない理由を「ロールモデルがいないから」と説明することはできます。しかし実務では、その裏側に複数の要因があります。管理職の働き方が忙しそうに見える、評価責任や部下対応が重く見える、家庭や介護との両立が想像しにくい、自分が候補者として期待されているのかわからない、過去にリーダー経験を任されていないなどです。
ロールモデルは、候補者が「自分にもできるかもしれない」と思うきっかけになります。一方で、候補者が経験を積む機会がないまま話だけを聞いても、自分事にはなりにくいものです。必要なのは、ロールモデル接点、管理職候補としての小さな経験、上司との面談、本人の不安を扱う場を組み合わせることです。
| よくある状況 | 背景 | 必要な打ち手 |
|---|---|---|
| 管理職になりたくない | 管理職像が重く、働き方の不安が強い | 管理職像の再定義、ロールモデル対話、両立条件の面談 |
| 候補者が見つからない | 経験付与や推薦が特定層に偏っている | 候補者リストの見直し、小さなリーダー経験の設計 |
| 研修後に変化がない | 研修で学んだことを試す場がない | 上司の支援、実践課題、振り返り面談 |
| ロールモデル施策が形骸化 | 講演を聞くだけで終わっている | 少人数対話、本人の問い、次の経験への接続 |
女性管理職を取り巻く現状
厚生労働省の令和6年度雇用均等基本調査では、管理職等に占める女性の割合について、部長相当職8.7%、課長相当職12.3%、係長相当職21.1%という結果が示されています。※2 上位役職ほど女性割合が低く、候補者が管理職になる前の段階で育成機会が細くなっている可能性があります。
女性活躍推進法では、企業に自社の状況把握、課題分析、行動計画の策定などが求められています。※3 女性管理職候補を増やす取り組みは、単発研修ではなく、採用、配置、育成、評価、登用、両立支援をつなぐ人事施策として扱う必要があります。

候補者育成パイプラインの作り方
女性管理職候補の育成では、まず候補者を「すでに手を挙げている人」だけに限定しないことが重要です。管理職を目指したいと明言していなくても、周囲への影響力、後輩育成、調整力、課題発見力を持つ人はいます。候補者を広めに見立て、本人の希望と組織の期待を面談で確認します。
次に、候補者が試せる経験を用意します。小さなプロジェクトのリード、後輩育成、会議進行、部署横断の調整、改善提案などです。経験を任せる際は、上司が期待を言語化し、途中で相談できる場を作ります。失敗を責めるのではなく、何を学んだかを振り返ることで、管理職に必要な力が育ちます。
| 段階 | 具体策 | 見落としやすい点 |
|---|---|---|
| 候補者の見立て | 推薦者、実績、周囲への影響、本人の希望を確認 | 手を挙げた人だけに限定しない |
| ロールモデル接点 | 複数の女性管理職・男性管理職との対話を用意 | 一人の成功例を正解にしない |
| 経験付与 | 後輩育成、会議進行、小規模リードを任せる | 経験後の振り返りを必ず置く |
| 上司支援 | 期待の伝え方、1on1、キャリア面談を研修する | 上司任せにせず人事が支援する |
キャリア面談で扱う問い
女性管理職候補とのキャリア面談では、「管理職になりたいですか」と聞くだけでは足りません。本人が管理職に対して何を不安に感じているのか、どの経験なら試せそうか、どのような働き方なら力を発揮できるかを聞く必要があります。
- 管理職に対してどんなイメージを持っているか
- 今の仕事で周囲に良い影響を与えた経験は何か
- 管理職に近い経験として、どの役割なら試せそうか
- 働き方やライフイベントで不安に感じていることは何か
- 上司・人事・外部相談窓口に期待する支援は何か
経験付与と上司支援
候補者が管理職に前向きになるかどうかは、上司の関わり方に大きく左右されます。上司が「管理職になってほしい」とだけ伝えると、本人は負担を押し付けられたように感じることがあります。一方で、どの強みを評価しているのか、どの経験を積めばよいのか、困った時にどう支援するのかを伝えると、期待は具体的な成長機会になります。
管理職候補育成では、上司向けの面談研修も重要です。候補者の不安を否定せずに聞く、期待を具体的に伝える、経験後に振り返る、本人のライフも含めてキャリアを考える。こうした関わり方ができる上司が増えるほど、候補者は安心して挑戦しやすくなります。
人事が見る指標と運用
女性管理職候補の育成は、研修参加者数やロールモデル面談の実施回数だけでは評価しきれません。人事としては、候補者の母集団が広がっているか、上司が推薦理由を言語化できているか、本人が次に試す経験を持てているか、管理職候補としての不安が面談で扱われているかを見ます。数値目標だけを先に置くと、候補者本人には「登用されるために説得されている」という印象が残ることがあります。
実務では、女性管理職候補の人数、候補者に付与した経験、上司とのキャリア面談実施状況、メンターやロールモデル接点、本人の希望変化、昇進前後のフォローを一つの台帳で追うと、施策のつながりが見えます。個人の事情を細かく管理するためではなく、組織として支援機会が偏っていないかを確認するためです。
| 見る指標 | 確認したいこと | 次の打ち手 |
|---|---|---|
| 候補者母集団 | 特定部署や特定上司の推薦に偏っていないか | 候補者の見立て基準を共有する |
| 経験付与 | 候補者が管理職に近い役割を試せているか | 小さなリード経験や後輩支援を設計する |
| 面談内容 | 本人の不安やライフを含む希望を扱えているか | 上司向けのキャリア面談研修を行う |
| 登用後フォロー | 昇進後に孤立していないか | メンター、外部相談、振り返り面談を置く |
ロールモデル施策は、候補者に「正解の女性管理職像」を見せるためのものではありません。複数の働き方、意思決定の仕方、家庭や介護との両立、周囲への頼り方を知り、自分なりの管理職像を作るための材料です。そのため、登壇者を一人に絞るより、複数の立場の人と少人数で話せる設計が有効です。
また、候補者本人だけでなく上司の関わり方も同時に変える必要があります。上司が「女性だから配慮する」「本人が望まないなら任せない」と善意で判断すると、挑戦機会が減る場合があります。期待を伝え、選択肢を出し、本人が試す経験を一緒に決める。この対話があることで、女性キャリアのロールモデル育成は人事施策として機能します。
候補者本人への支援と同時に、周囲の期待を整えることも大切です。女性管理職候補だけを特別扱いしているように見えると、本人にも周囲にも負担が生まれます。なぜ今、女性管理職候補の育成に取り組むのか、会社としてどのような管理職像を増やしたいのか、上司や職場に何を期待するのかを説明しておくと、施策の意味が伝わりやすくなります。
また、ロールモデルの存在を「憧れ」だけで終わらせないためには、候補者が自分の言葉で次の行動を決める時間が必要です。対話後に、次の半年で試す役割、上司に相談すること、必要な学習テーマ、避けたい不安を整理します。人事はその結果を個人評価に直結させるのではなく、育成機会の設計に使うことで、安心して話せる場を維持できます。
管理職候補育成では、本人が言葉にしにくい迷いも扱います。たとえば「管理職になれば現場から離れるのではないか」「家庭との両立が難しくなるのではないか」「自分の強みが管理職に向いているのかわからない」といった不安です。これらを曖昧なままにせず、面談で分けて整理すると、研修や経験付与の意味が伝わりやすくなります。
キャリアバランスで支援できること
キャリアバランスでは、女性管理職候補の育成を、女性本人向け研修だけで完結させません。女性活躍推進支援、ダイバーシティ推進、上司向けキャリア面談研修、管理職候補育成、キャリア相談室の設計を組み合わせ、候補者本人と上司・人事の双方を支援します。
ロールモデル施策を行う場合も、講演だけで終わらせず、候補者自身の問いを持って対話する場を設計します。面談で不安を扱い、研修で管理職に必要な考え方を学び、現場で小さな経験を任せ、振り返りを行う。こうした流れを作ることで、女性管理職候補の育成を個人任せにしない仕組みにできます。
よくある質問
Q. 女性管理職のロールモデルは何人いれば十分ですか?
人数だけでなく、多様な働き方や管理職像が見えることが重要です。候補者が自分に近い経験を持つ人と対話できる接点を増やします。
Q. 女性管理職候補が手を挙げない場合はどうすればよいですか?
本人の意欲不足と決めつけず、役割不安、両立不安、経験不足、周囲の期待の伝わり方を面談で分けて確認します。
Q. ロールモデル施策だけで女性管理職は増えますか?
ロールモデル接点は有効ですが、それだけでは不十分です。経験付与、上司支援、メンター制度、評価前後の面談を組み合わせます。
Q. 管理職候補育成と女性活躍推進はどうつなげますか?
候補者数、経験付与、推薦行動、昇進前後の不安、上司の支援行動を一つの育成パイプラインとして見ます。



