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アンラーン研修の進め方|押し付けにしない設計と職場実践へのつなげ方

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研修で気づき、職場で試し、対話で更新する


監修:株式会社キャリアバランス

アンラーン研修の事前準備から職場実践までを段階別に整理した研修資料
アンラーン研修の各工程を整理した研修会場の資料

アンラーン研修は、参加者に古い考え方を捨てさせる場ではありません。これまでの経験が有効だった条件を確認し、役割や環境の変化に合わせて仕事の進め方を更新するための研修です。このページでは、対象者と課題の決め方、事前診断、対話型ワーク、職場で試す行動、上司の支援、効果測定まで、研修をやりっぱなしにしない設計を人事向けに解説します。

アンラーン研修とは
アンラーン研修とは、本人の経験を一律に否定せず、現在も活かす強みと、今後の役割に合わせて使い方を更新する行動を分け、職場で試すところまで設計する研修です。アンラーンの基本的な意味とリスキリングとの違いは、アンラーンとは何かを解説した記事で確認できます。

アンラーンは、講義を聞くだけでは起こりにくい変化です

アンラーン研修で起こりやすい失敗は、言葉の意味と必要性を説明しただけで終えることです。参加者が「変化が必要だ」と理解しても、自分のどの行動を、どの場面で、どのように変えるかが決まっていなければ、職場へ戻ると従来の方法に戻ります。長年使ってきた判断や仕事の進め方は、知識不足ではなく、時間制約や評価基準、周囲との関係の中で定着しているためです。

もう一つの失敗は、会社側が「古い考え方」を決めつけることです。アンラーンという言葉には、忘れる、捨てるという印象があります。研修の冒頭で「過去の成功体験を手放しましょう」とだけ伝えると、実績のある管理職やベテラン社員は、自分の経験を否定されたように感じます。参加者の防御反応が強くなると、無難な発言だけが増え、実際の課題を扱えません。

研修の目的は、全員を同じ考え方に変えることではありません。今も活かす知識や強み、状況に応じて使い方を変える行動、今後新しく学ぶことを分けることです。参加者が自分の経験を材料にして、更新する必要性を自分の言葉で説明できる状態を目指します。

厚生労働省の「職場における学び・学び直し促進ガイドライン」は、労働者の自律性を尊重しながら、企業が学びを支援する考え方を示しています。※1 アンラーン研修も、会社が正解を与えるだけでなく、本人のキャリアや役割との接続、職場で試せる環境を用意する必要があります。

講義中心で終わる設計職場実践までつなぐ設計
アンラーンの意味を説明する本人の実例から更新する行動を決める
古い考え方を一覧で示す経験が役立つ条件と見直す条件を分ける
研修内で感想を共有する職場で試す場面と期限を決める
満足度で終了する上司や同僚と実践結果を振り返る

押し付けを防ぐには、本人が更新点を選べる余地を残します

研修の案内文では、能力不足を補う施策のように見せないことが大切です。「時代遅れの考えを捨てる研修」ではなく、「経験を次の役割で活かすために、仕事の進め方を点検する研修」と説明します。対象者の選定理由も、年齢や役職だけでなく、役割の変化、事業環境の変化、部下育成の必要性など、研修目的と結びつけます。

研修中は、変えるべき行動を講師が一方的に決めません。参加者が扱いたい場面を選び、事実、普段の対応、背景にある考え、相手の反応、別の選択肢を整理します。講師は「その考えは古い」と評価せず、「その方法はどの状況で機能したか」「今の役割ではどんな影響があるか」と問い、本人が更新点を見つけられるよう支援します。

また、アンラーンは個人だけの課題にしないことが重要です。組織の評価制度、短期成果への圧力、権限の曖昧さ、上司自身の管理方法が、従来行動を強めている場合があります。研修で個人に変化を求める前に、職場で新しい行動を試しても不利益にならないかを確認します。

研修後に参加者が自分で選ぶ行動は、一つか二つに絞ります。たとえば「部下の相談に答える前に、本人の見立てを聞く」「会議で発言の少ない人から意見を聞く」「過去の経験を話した後、今の状況に合うかを相手に確認する」などです。小さく試せる行動なら、変化を実感しやすくなります。

アンラーン研修で使う事前診断、対話、職場実践、振り返りの資料
アンラーン研修の工程を段階別に並べた資料

対象者は年齢ではなく、役割変化と事業課題から決めます

アンラーン研修は、特定の年代だけに必要なものではありません。管理職候補はプレイヤーからマネジメントへ、新任管理職は自分で成果を出す方法から部下を通じて成果を出す方法へ移ります。ベテラン層は専門性の継承や新しい技術との協働、職種転換者は新しい組織や顧客への適応が課題になります。対象者ごとに更新する行動が異なります。

人事は、最初に「誰にアンラーンさせたいか」ではなく、「どの事業課題を解くために、どの役割行動を変える必要があるか」を整理します。新規事業で既存の意思決定が遅い、女性管理職候補に経験が渡らない、1on1が業務確認だけになっている、ベテラン社員の知識継承が進まないなど、課題を具体化します。

対象者を選ぶ際は、本人に不利益な選抜と見えないようにします。年齢が高いから、変化に弱そうだからという理由では、研修の信頼を損ねます。新しい役割へ移る人、チーム運営を担う人、事業変化の影響を受ける人など、業務上の理由を説明し、必要に応じて上司にも同じ説明を行います。

対象扱う場面更新する行動の例
管理職候補・新任管理職部下育成、任せ方、1on1正解提示から問いと権限移譲へ
既任管理職多様な部下、組織変革自分と同じ働き方を基準にしない
ベテラン層専門性継承、新しい技術経験の使い方を再編集する
職種転換・配置転換者新しい顧客、業務、チーム前職の前提を新しい環境で点検する

事前診断と対話型ワークで、本人の実例を教材にします

事前診断は、性格を判定するテストではなく、日常の行動を振り返る材料として設計します。最近うまくいかなかった場面、以前は機能したが今は難しい方法、周囲から意見を受けた行動、新しい役割で不安なことを記入してもらいます。研修の数日前から行動を観察すると、具体的な事例が集まります。

研修冒頭では、アンラーンを「忘れること」ではなく「条件に合わせて使い分けられるようにすること」と定義します。次に、参加者が自分の成功体験を一つ選び、その経験が有効だった状況、得られた強み、現在の役割で起きる問題を整理します。過去の価値を認めてから更新点を扱うことで、否定された感覚を減らせます。

対話型ワークでは、二人組や少人数でケースを検討します。聞き手は助言を急がず、「その方法が役立ったのはどんな条件でしたか」「今の相手や環境では何が違いますか」「強みを残したまま変えられることは何ですか」と質問します。話し手は、講師から正解を受け取るのではなく、自分で選択肢をつくります。

ケースは対象者の実務に合わせます。管理職研修なら部下から相談された場面、ベテラン研修なら専門知識を後輩へ伝える場面、職種転換者なら前職の手順が新しい部署で通用しない場面などです。企業固有の状況を匿名化して教材にすると、受講者が自分の仕事へ結びつけやすくなります。

ファシリテーターは、発言を正しい・古いで評価しません。参加者が過去を弁護し始めた場合は、反論せず、その行動が守ってきた価値を確認します。そのうえで「同じ価値を別の方法で守るとしたら」と問い、代替行動へつなげます。心理的に安全な対話がなければ、参加者は本当に見直したい行動を出しません。

研修後は、上司との1on1と仕事で試す機会を組み込みます

研修内で気づきを得ても、職場の忙しさや周囲の期待が変わらなければ、従来の行動に戻ります。研修の最後に、参加者が「誰との、どの場面で、何を試すか」を決め、上司や関係者と共有します。実践期間は二週間から一か月程度に区切り、試した結果を振り返れるようにします。

上司の役割は、研修内容をテストすることではありません。参加者が変えたい行動と必要な支援を確認し、試せる仕事や対話の場を用意します。たとえば、管理職候補が任せ方を変えたい場合は、小規模な案件を渡し、途中で介入しすぎないよう相談条件を合意します。ベテラン社員が知識継承を見直す場合は、後輩との共同作業や説明機会を設定します。

1on1では、「できたか、できなかったか」だけを聞かず、「どの場面で従来の反応が出たか」「別の行動を試すと相手はどう反応したか」「次は条件をどう変えるか」を確認します。失敗を評価に直結させると、参加者は安全な行動しか試さなくなります。実践期間は学習の場として扱うことが必要です。

同じ研修を受けた参加者同士のフォロー会も有効です。自分の職場では当たり前だと思っていた判断が、他部署では異なることに気づけます。成功事例だけでなく、うまくいかなかった場面とその条件を共有すると、アンラーンが一度の決断ではなく、試行と振り返りの過程であることが理解されます。

必要に応じて、社外のキャリア相談窓口やキャリアコンサルティングを組み合わせます。上司には話しにくいキャリア不安や、自分の専門性が通用しなくなる不安が、変化への抵抗として表れていることがあります。第三者との対話で本人の経験、今後の役割、学び直しの意味を整理すると、研修で決めた行動へ進みやすくなります。

アンラーン研修は、六つのステップで設計します

第一に、事業課題と役割行動を定義します。研修テーマを先に決めず、どの事業課題に対し、誰のどの行動を更新したいかを明らかにします。第二に、対象者と関係者を決めます。参加者だけでなく、その上司、人事、必要に応じて部下側にも施策の目的を共有します。

第三に、事前診断を行います。行動記録、簡易アンケート、ヒアリングなどで、参加者が困っている場面と組織側の期待を集めます。第四に、研修内で経験を振り返り、対話とケース演習を行います。今も活かす強み、条件に応じて変える行動、新しく学ぶことを分け、実践計画を作ります。

第五に、職場で実践します。実際の会議、1on1、プロジェクト、後輩育成など、既存業務の中で小さく試します。第六に、フォロー会や上司との面談で振り返ります。実践結果をもとに、行動を継続するか、別の方法を試すか、職場の仕組みを変えるかを決めます。

経済産業省の人的資本経営に関する資料は、人材戦略を経営戦略と連動させる重要性を示しています。※2 アンラーン研修も単独の啓発施策にせず、事業変化、役割設計、配置、評価、キャリア開発とつなげる必要があります。また、労働政策研究・研修機構の能力開発に関する情報は、企業内の人材育成を制度と職場の両面から捉える資料になります。※3

  1. 事業課題と更新したい役割行動を決める
  2. 対象者、上司、人事の役割を決める
  3. 実際の行動と困りごとを事前に集める
  4. 経験の棚卸しと対話型ワークを行う
  5. 職場で試す一つの行動を決める
  6. フォロー会で結果と組織条件を振り返る

効果測定と外部委託では、研修後の仕組みまで確認します

効果測定は、参加人数、満足度、理解度だけでは不十分です。研修前に設定した行動が職場で試されたか、上司が支援したか、仕事の進め方や対話にどのような変化があったかを確認します。短期指標として実践率や振り返り実施率、中期指標として部下の提案、経験付与、部署間連携などを置きます。

アンケートは「アンラーンできましたか」と聞くより、具体的な行動を尋ねます。「助言の前に相手の見立てを聞いた」「自分の方法を押し付けず選択肢を比べた」「任せる目的と裁量を合意した」などです。上司や部下側の認識も確認すると、本人だけの自己評価に偏りません。

外部へ研修を依頼するときは、講義時間と教材だけでなく、事前の課題整理、ケースの作成、実践計画、フォロー方法、効果確認まで提案に含まれるかを確認します。一般的なアンラーンの説明だけでなく、御社の事業課題や対象者の役割に合わせて内容を組み替えられるかが重要です。

講師の専門性も確認します。キャリア開発、管理職支援、組織開発、メンタルヘルスなど、対象課題に必要な知見を持っているか、参加者の抵抗や不安を対話で扱えるかを見ます。アンラーンは個人の内省を含むため、参加者を追い込まず、守秘と心理的安全性に配慮できる運営が必要です。

初回は対象部署を絞り、研修とフォローを試行すると設計を改善しやすくなります。参加者の反応だけでなく、どの実践課題なら試しやすかったか、上司の支援にどれだけ時間が必要だったか、制度上の障害は何かを整理し、次の展開に反映します。

確認項目外部委託先へ聞くこと
課題設定自社の事業課題と対象者の行動をどう整理するか
研修方法講義以外に、実例の対話と練習をどう組み込むか
職場実践研修後に何を試し、上司はどう支援するか
効果測定満足度以外の行動変化をどう確認するか
個別対応抵抗やキャリア不安をどのように扱うか

よくある質問

アンラーン研修とは何ですか?

これまでの前提や仕事の進め方を振り返り、今後の役割に合わせて使い方を更新するための研修です。過去の経験を一律に否定する研修ではありません。

アンラーンを押し付けに見せないためにはどうしますか?

変えるべき考え方を会社が決めつけず、本人の経験が役立つ場面と見直したい場面を対話で分け、本人が試す行動を選べるようにします。

どの階層をアンラーン研修の対象にしますか?

管理職候補、新任管理職、ベテラン層、職種転換者など、役割変更や環境変化によって従来の方法を更新する必要がある層から始めます。

アンラーン研修後は何を行いますか?

職場で試す行動と対象場面を決め、上司との1on1やフォロー会で結果を振り返り、次に更新する行動へつなげます。

アンラーン研修の効果はどう測りますか?

満足度だけでなく、本人が決めた実践行動の実施、上司との振り返り、仕事の進め方や対話の変化を研修前後で確認します。

参考文献

  1. 厚生労働省「職場における学び・学び直し促進ガイドライン」
  2. 経済産業省「人的資本経営」
  3. 労働政策研究・研修機構「日本企業の能力開発システム」

著者プロフィール

CAREERBALANCE

株式会社キャリアバランス

キャリアコンサルタント、1級キャリアコンサルティング技能士、公認心理師など、全員が国家資格を保有するカウンセラー・講師チームが、企業内キャリア相談室の立ち上げ・運用支援、キャリア開発研修、管理職向け面談研修、メンタルヘルス対策を支援しています。

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