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管理職のアンラーンとは?経験則を更新し、部下育成を変える実践方法

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成功体験を捨てず、管理職としての使い方を更新する


監修:株式会社キャリアバランス

管理職が経験則を整理し新しい部下育成の方法を検討するための資料
過去の経験と新しい管理職行動を整理する資料

管理職のアンラーンとは、プレイヤー時代や過去のマネジメントで得た成功体験を否定することではありません。自分が成果を出すために有効だった判断基準や行動を、部下を通じて成果を生み出す役割に合わせて更新することです。このページでは、管理職にアンラーンが必要な理由、起こりやすい行動、1on1で使える問い、研修と職場実践の設計、効果を確認する指標まで、人事が施策に落とし込める順序で解説します。

管理職のアンラーンとは
管理職のアンラーンとは、過去の成功体験を捨てるのではなく、今の事業環境、部下の経験、管理職としての責任に合わせて、意思決定、任せ方、対話、評価の使い方を更新することです。言葉の基本的な意味やリスキリングとの違いは、アンラーンとは何かを解説した記事で整理しています。

プレイヤーと管理職では、成果を生み出す方法が変わります

プレイヤーとして評価されてきた人は、自分で情報を集め、判断し、手を動かすことで成果を出してきました。仕事を早く正確に進めること、問題を自分で解決すること、顧客に直接応えることは大きな強みです。しかし管理職になると、自分一人の処理量を増やすだけでは組織成果を伸ばせません。部下が考え、試し、学び、成果を出せる環境をつくることが役割に加わります。

この役割転換で難しいのは、過去の成功体験が間違っているわけではないことです。時間がない場面では、管理職が決めた方が早いこともあります。重大なリスクがある場面では、細かく確認する必要もあります。問題は、その方法をすべての場面で使い続けることです。状況ごとに「自分が決める」「部下と考える」「部下に任せる」を選べる状態へ更新する必要があります。

経済産業省は、人的資本経営を、人材の価値を最大限に引き出し、中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方としています。※1 管理職のアンラーンも、個人の性格を直す施策ではありません。事業戦略に必要な人材を育てるために、現場での経験付与、対話、権限移譲を機能させる組織施策です。

厚生労働省の「職場における学び・学び直し促進ガイドライン」は、労働者の自律的・主体的な学びを、企業が職場で支える重要性を示しています。※2 部下が学んだ内容を仕事で試せるかどうかは、上司の任せ方に左右されます。管理職研修と部下のキャリア開発を別々に扱わず、同じ実践サイクルとして設計することが重要です。

場面プレイヤーとして有効な行動管理職として更新する行動
問題解決自分で正解を見つけて処理する部下の見立てを聞き、判断の根拠を育てる
仕事の配分得意な仕事を自分で引き受ける成長課題に合わせて経験を渡す
進捗確認細部まで自分の基準で確認する目的・期限・裁量範囲を合意して節目で確認する
成果の出し方個人の処理量と品質を高めるチームが継続して成果を出せる仕組みをつくる

成功体験が部下育成を妨げるのは、使う場面が固定されたときです

管理職のアンラーンが必要になる代表的な場面は、部下の相談にすぐ答えを出すことです。知識と経験が豊富な管理職ほど、短時間で解決策を示せます。しかし、毎回答えを渡していると、部下は問題を整理し、選択肢を比べ、自分で判断する経験を積めません。管理職本人は支援しているつもりでも、結果として相談が集中し、チームの自律性が下がることがあります。

二つ目は、重要な仕事を抱え込むことです。「自分がやった方が早い」「失敗させられない」という判断は、短期的には合理的です。一方で、部下に経験が渡らず、管理職の業務量も減りません。任せることを仕事の移管だけでなく、目的、裁量範囲、相談のタイミングを合意する育成行動として捉え直す必要があります。

三つ目は、自分と同じ成長経路を部下に求めることです。管理職が若手だった時代と現在では、事業環境、働き方、キャリア観、利用できる技術が異なります。「自分はこうして覚えた」という経験は参考になりますが、それだけを唯一の正解にすると、部下の強みや状況に合わない支援になります。

四つ目は、結果だけで評価して過程を振り返らないことです。部下が成果を出せなかったとき、能力不足と結論づける前に、目標の明確さ、任せた裁量、途中の支援、関係者との調整、必要な学習機会を確認します。アンラーンは、部下だけを変える施策ではなく、管理職自身の関わり方と職場条件を同時に見直す作業です。

過去の管理職行動と新しい部下育成の選択肢を比較する資料
管理職の経験則を役割に合わせて整理し直す資料

見直したいのは、抱え込み・正解提示・過度な確認・同質性の四つです

人事が管理職のアンラーンを扱うときは、「考え方を柔軟にしてください」と抽象的に伝えるのではなく、職場で観察できる行動に分けます。代表的なのは、重要業務を自分で抱える、相談されるとすぐ正解を示す、任せた後も細部まで自分の方法に合わせる、自分と似たタイプを高く評価するという四つです。

抱え込みを見直すには、管理職が持っている業務を棚卸しし、「管理職が担うべき判断」「部下に経験として渡す仕事」「標準化してチームで回す仕事」に分けます。単に仕事を減らすのではなく、部下の育成課題と仕事を対応させることが重要です。

正解提示を見直すには、相談を受けた最初の一言を変えます。「こうすればいい」と答える前に、「今の状況をどう見ていますか」「選択肢は何がありますか」「判断に足りない情報は何ですか」と聞きます。緊急時は指示を出し、育成できる場面では問いを使うという切り替えが必要です。

過度な確認を見直すには、任せる前の合意を具体化します。目的、期待する成果、期限、裁量の範囲、途中で相談する条件を決めます。事前の合意が曖昧なまま「任せた」と言うと、管理職は不安になって介入し、部下は何を自分で決めてよいか分からなくなります。

同質性を見直すには、評価の根拠を言葉にします。「安心して任せられる」「管理職らしい」といった印象ではなく、どの行動や成果を見ているかを確認します。ダイバーシティ推進や女性管理職候補の育成でも、自分と同じ働き方やコミュニケーションを暗黙の基準にしていないかを振り返る必要があります。

1on1では、答えを渡す前に見立てと次の一歩を聞きます

1on1は、管理職がアンラーンを試す場として活用できます。目的は、部下の話を長く聞くだけではなく、本人が状況を整理し、自分で次の行動を選べるようにすることです。管理職は、質問、要約、承認、フィードバックを使い分けます。

最初に事実と解釈を分けます。「何が起きましたか」「相手は実際に何と言いましたか」「あなたはどう受け取りましたか」と確認すると、管理職自身の先入観で問題を決めつけにくくなります。次に、「何を大事にしたいですか」「どの選択肢がありますか」「まず小さく試せることは何ですか」と、本人の判断を促します。

部下が考えを出せない場合でも、すぐに答えを渡す必要はありません。管理職の経験を一つの選択肢として伝え、「私の経験ではこういう方法もあった。今の状況ではどう思う」と返します。これなら経験を活かしながら、部下の判断を奪いません。

面談の最後には、次に試す行動、必要な支援、振り返る時期を決めます。1on1でよい対話ができても、仕事の任せ方が変わらなければ行動は定着しません。対話と経験付与を一つのセットにすることが、管理職のアンラーンを実務へつなげます。

従来の反応更新する問い確認すること
すぐ解決策を示すあなたは状況をどう見ていますか部下自身の見立て
失敗しない方法を細かく指示するどこまで自分で決めたいですか裁量と支援の範囲
結果だけを評価する試して分かったことは何ですか学習と次の行動
自分の経験を正解として語るこの経験は今の状況でも使えそうですか経験を使う条件

研修では「捨てるべき癖」を決めつけず、経験が機能する条件を扱います

管理職に「過去の成功体験を捨ててください」と伝えると、アンラーンは反省会や価値観の矯正に見えます。特に実績のある管理職ほど、自分の経験や貢献を否定されたと感じやすくなります。研修では、まずその行動が役立った状況と生み出した成果を確認し、今の役割でも同じ使い方が適切かを検討します。

たとえば、危機対応で管理職が迅速に指示することは必要です。しかし、平常時の部下育成でも常に指示を続ければ、部下の判断経験が増えません。「指示することをやめる」ではなく、「緊急度と育成目的に応じて、指示と問いを使い分ける」と定義すると、実務に移しやすくなります。

研修の題材には、一般論だけでなく実際の管理場面を使います。部下から相談された場面、納期が遅れた場面、任せた仕事に不安を感じた場面、異なるキャリア観を持つ部下と面談する場面などです。参加者は、自分がとった行動、その背景にある前提、相手に起きた反応、別の選択肢を順に整理します。

ロールプレイでは、きれいな回答を覚えることより、いつもの反応に気づくことを重視します。すぐ助言する、話を先回りする、部下の言葉を評価する、といった癖は実演すると見えやすくなります。観察者は人格を評価せず、「どの問いで相手の発言が増えたか」「どの瞬間に管理職が結論を出したか」を具体的に返します。

厚生労働省の学び直しに関する企業事例でも、管理職が部下のキャリア形成を支援するための研修や対話機会が紹介されています。※3 管理職本人の研修だけで終えず、部下との面談、実際の仕事の任せ方、次回の振り返りまでつなげることが重要です。

人事は、課題特定・研修・職場実践・振り返りを一つのサイクルにします

第一段階は、対象となる管理職行動を特定することです。管理職全般の意識改革という大きな目的ではなく、部下への正解提示が多い、仕事を任せられない、1on1が進捗確認になっている、管理職候補の育成が進まないなど、現場で起きている場面に絞ります。人事への相談、従業員調査、研修アンケート、部下側の声を組み合わせると、課題を誤認しにくくなります。

第二段階は、研修前の自己観察です。参加者に一週間程度、部下から相談された場面、指示した場面、任せた場面を記録してもらいます。管理職自身が「どのような状況でいつもの反応が出るか」を把握してから研修に入ると、一般論ではなく自分の実務として考えられます。

第三段階は、研修内での整理と練習です。成功体験を棚卸しし、現在も活かす強みと、使い方を変える行動を分けます。そのうえで、問いかけ、任せ方、フィードバック、キャリア面談をケースで練習します。研修の最後には、一度に多くを変えず、次の二週間で試す行動を一つ決めます。

第四段階は、職場での実践です。「次の1on1で助言の前に二つ質問する」「一つの案件で裁量範囲を明文化して任せる」など、観察できる行動にします。実践の対象となる部下に、研修内容を詳しく説明する必要はありませんが、関わり方を試していることを共有すると、対話が自然になります。

第五段階は、上司や同僚との振り返りです。管理職本人も、一人では自分の癖に気づきにくいものです。研修後のフォロー会、上位管理職との1on1、同じ階層の少人数対話などで、試したこと、相手の反応、難しかったことを確認します。できなかったことを責めず、条件を変えて再度試せるようにします。

第六段階は、制度や職場条件の見直しです。管理職に権限移譲を求めても、失敗が許容されない評価制度や過度な短期目標があれば、抱え込みは減りません。会議の意思決定、評価基準、管理職の業務量、部下の経験機会を確認し、個人研修だけでは解けない要因を人事課題として扱います。

効果は満足度ではなく、管理職行動と部下側の変化で確認します

管理職研修の効果を受講直後の満足度だけで判断すると、アンラーンが職場で起きたかは分かりません。研修前に対象行動を決め、研修後一か月、三か月などの時点で実践状況を確認します。観察するのは、質問の回数そのものではなく、管理職の関わりによって部下の判断、提案、経験が増えたかです。

管理職本人には、任せた仕事、1on1で試した問い、助言を待った場面、振り返って変えたい行動を記録してもらいます。部下側には、期待役割が分かるか、自分で考える余地があるか、困ったときに相談できるか、フィードバックが次の行動につながるかを確認します。人事は、双方の見え方が大きくずれている部署を支援対象として把握できます。

チーム成果との関係を見る場合も、研修だけの効果と断定しないことが重要です。提案件数、改善活動、後継者候補の経験、離職意向、エンゲージメントなどを参考にしつつ、配置や業務量など他の要因と合わせて判断します。管理職のアンラーンは短期的な数値改善だけでなく、部下が自ら考えて動ける状態をつくる中長期の施策です。

導入は、全管理職へ一斉展開する前に、課題が明確な部門や新任管理職から始める方法があります。小規模に実践し、使いやすかった問い、任せにくかった業務、フォローに必要な期間を確認してから、他部門へ展開します。組織固有の事例を教材に反映すると、自社のマネジメント課題に合ったプログラムになります。

確認時点見る項目確認方法
研修前抱え込み、正解提示、1on1の現状自己観察・部下側の簡易調査
研修直後試す行動と対象場面実践計画
1か月後問いかけ、任せ方、振り返りの実施フォロー会・上司との1on1
3か月後部下の提案、判断経験、相談の質管理職・部下双方への確認

よくある質問

管理職のアンラーンとは何ですか?

プレイヤー時代の成功体験を否定せず、管理職の役割に合わせて意思決定、任せ方、部下との関わり方を更新することです。

なぜ管理職にアンラーンが必要ですか?

自分で成果を出す役割から、部下を通じて成果を生み出す役割へ移ると、過去に有効だった抱え込みや正解提示が育成を妨げる場合があるためです。

成功体験は捨てる必要がありますか?

捨てる必要はありません。経験が役立つ場面と、今の組織や部下に合わせて使い方を変える場面を分けて整理します。

1on1で管理職のアンラーンをどう進めますか?

上司自身の正解を教える前に、部下の見立て、選択肢、試したい行動を問い、任せた後の振り返りまでセットで行います。

管理職研修の効果はどう測りますか?

受講満足度だけでなく、問いかけ、権限移譲、フィードバック、1on1の継続、部下の行動変化を研修前後で確認します。

参考文献

  1. 経済産業省「人的資本経営」
  2. 厚生労働省「職場における学び・学び直し促進ガイドライン」
  3. 厚生労働省「企業の取組事例:JTB」

著者プロフィール

CAREERBALANCE

株式会社キャリアバランス

キャリアコンサルタント、1級キャリアコンサルティング技能士、公認心理師など、全員が国家資格を保有するカウンセラー・講師チームが、企業内キャリア相談室の立ち上げ・運用支援、キャリア開発研修、管理職向け面談研修、メンタルヘルス対策を支援しています。

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