COLUMN

アンラーンとリスキリングとは

COLUMN

学び直しをキャリア自律につなげる方法


監修:株式会社キャリアバランス

イメージ写真:学び直しや人材育成の検討資料を並べた人物のいないデスク
学び直しや人材育成の検討資料を並べた人物のいないデスク

アンラーンとは、過去の成功体験や慣れたやり方を一度見直し、新しい環境に合わせて学び直すための余白を作ることです。リスキリングは、新しい役割や業務に必要なスキルを獲得する取り組みです。企業で成果につなげるには、研修受講だけでなく、本人のキャリア面談、上司の支援、実践機会をセットにする必要があります。

アンラーンとリスキリングとは
アンラーンは、これまでの前提や仕事の進め方を見直すことです。リスキリングは、新しい仕事や役割に必要なスキルを学び直すことです。どちらも、キャリア自律や職場での経験付与と組み合わせることで、受講だけで終わらない施策になります。

アンラーンは捨てること、リスキリングは足すことだけではありません

アンラーンは、過去の経験を否定することではありません。これまでの経験が有効だった場面と、今後は見直した方がよい前提を分けることです。ベテラン社員や管理職ほど、過去の成功体験が強みである一方、新しい環境ではブレーキになることがあります。アンラーンは、その強みを手放すのではなく、使い方を更新する作業です。

リスキリングは、単に新しい講座を受けることではありません。新しい業務、役割、事業戦略に必要なスキルを獲得し、実際の仕事で使うことまで含めて設計する必要があります。研修を受けても使う場がなければ、学びは定着しません。

厚生労働省は、職場における学び・学び直し促進ガイドラインで、企業内での自律的・主体的な学び直しを促す重要性を示しています。※1 企業のリスキリング施策も、本人の主体性と組織の支援を両方設計することが求められます。

実務では、アンラーンとリスキリングを分けて考えると設計しやすくなります。まず、今までのやり方で通用しにくくなっている部分を言語化します。次に、新しく身につけるスキルを決めます。最後に、そのスキルを試す仕事や面談での振り返りを設定します。

言葉意味企業での扱い方
アンラーン前提や慣れたやり方を見直す過去の成功体験と今後の役割を整理する
リスキリング新しい業務に必要な力を学び直す学習内容と実践機会をセットで設計する
キャリア自律本人が次の役割を考え行動する面談・1on1・相談窓口で支える

リスキリングがやりっぱなしになる理由は、仕事との接続不足です

リスキリング施策がうまくいかない理由の一つは、学習テーマだけを先に決めてしまうことです。デジタルスキル、マネジメント、コミュニケーション、コーチングなどを学んでも、本人の現在の役割や次の仕事と結びつかなければ、受講後の行動は変わりません。

もう一つは、本人の不安を扱わないことです。新しいスキルを学ぶ場面では、「今さらできるのか」「若手に比べて遅れているのではないか」「学んでも仕事が変わらないのではないか」といった不安が出ます。特にベテラン層や管理職層では、自分の過去の経験が否定されるように感じることもあります。

研修を受けた後に、上司が何も関わらないことも問題です。本人が何を学んだのか、どこで試すのか、どの仕事なら任せられるのかを上司が把握していなければ、学びは職場で使われません。1on1やキャリア面談で、学習内容と仕事をつなげる必要があります。

学び直しを成果につなげるには、受講前から出口を設計します。何のために学ぶのか、何を手放すのか、どの仕事で使うのか、誰が支援するのか、いつ振り返るのかを決めます。これがないと、研修は福利厚生的な学習機会で終わってしまいます。

イメージ写真:アンラーンとリスキリングの検討資料を机上で整理する場面
アンラーンとリスキリングの検討資料を机上で整理する場面

キャリア面談と接続すると、学び直しの意味が本人に戻ります

リスキリングの前にキャリア面談を行うと、本人にとって学び直しの意味が明確になります。今後どのような役割を担いたいのか、どの経験を活かしたいのか、何に不安を感じているのかを整理することで、学ぶテーマを選びやすくなります。

面談では、本人のWill・Can・Mustを分けて確認します。本人がやりたいこと、これまでできてきたこと、組織から期待されることを整理し、その重なりに学習テーマを置きます。これにより、学び直しが会社都合の押し付けではなく、本人の次のキャリアにつながるものとして理解されやすくなります。

ベテラン層では、過去のCanを棚卸しするだけでなく、今後どのような貢献をしたいかを扱うことが大切です。後進育成、専門性の継承、新規プロジェクトへの参加、顧客対応の高度化など、既存の経験を新しい役割へ転用する視点を持つと、学び直しへの抵抗が下がります。

若手や中堅社員では、学び直しを早い段階でキャリア形成に組み込むことが重要です。新しいスキルを学ぶだけでなく、そのスキルを使ってどんな経験を積むかを設計すると、成長実感やエンゲージメント向上にもつながります。

管理職は、学習管理者ではなく経験設計者になります

リスキリングを現場で活かすには、管理職の関わりが欠かせません。管理職は、部下が受講した研修を把握するだけでなく、学んだことを使う機会を作ります。小さなプロジェクト、会議での役割、改善提案、後輩育成など、学びを試す場を意図的に渡します。

管理職向け研修では、部下の学びを評価するのではなく、対話で支える方法を扱います。何を学んだのか、どこで使えそうか、何が不安か、次に試す仕事は何かを聞きます。学び直しは本人の努力だけでなく、職場の受け入れ方にも左右されます。

アンラーンの支援では、過去のやり方を頭ごなしに否定しないことが大切です。管理職が「古いやり方だ」と言ってしまうと、本人は守りに入ります。まず過去の経験が役立ってきた場面を認め、そのうえで今後変える部分を一緒に整理します。

チーム単位では、学び直しを個人の努力に閉じないことも重要です。誰がどのスキルを学んでいるのか、チームの業務にどう活かせるのかを共有し、互いに試せる環境を作ります。これにより、リスキリングは個人研修ではなく、職場改善や事業変化への対応になります。

管理職の行動目的面談での問い
学習前に意味を確認する本人の納得感を高める何のために学びたいですか
実践機会を渡す学びを行動に変えるどの仕事で試せそうですか
振り返る定着と次の学びへつなげる使ってみて何が分かりましたか

アンラーンは、経験を否定せず役割を更新する対話です

アンラーンという言葉は、使い方を誤ると反発を生みます。「これまでのやり方を捨ててください」と言われると、本人は自分の経験を否定されたように感じます。企業研修では、アンラーンを過去の否定ではなく、強みの使い方を変えることとして説明する方が受け入れられやすくなります。

たとえば、ベテラン社員が持つ顧客理解、社内調整力、業務知識は大きな資産です。一方で、若手への指導方法、デジタルツールの活用、チームでの情報共有、管理職としての関わり方は、時代に合わせて更新が必要になることがあります。強みと更新点を分けて扱うことがポイントです。

キャリア面談では、過去の成功体験を振り返り、その経験が今も有効な場面と、見直す必要がある場面を整理します。そのうえで、今後の役割に必要な学びを選びます。本人が納得して学び直しを選ぶと、研修への参加姿勢も変わります。

組織側は、アンラーンを個人の性格の問題にしないことが大切です。業務プロセス、評価制度、上司の期待、職場風土が古い行動を強めている場合もあります。個人の学び直しと同時に、職場の仕組みも見直します。

導入は、学習テーマより先に役割と経験を決めます

リスキリング施策を始めるときは、最初に講座を選ぶのではなく、どの役割に向けて学ぶのかを決めます。新規事業、DX推進、管理職候補育成、ベテラン層の役割再設計、女性管理職候補支援など、目的によって必要な学習テーマは変わります。

次に、対象者とのキャリア面談を行います。本人の経験、今後の希望、不安、組織から期待される役割を整理し、学び直しの意味を本人の言葉で確認します。ここを飛ばすと、研修が会社から押し付けられたものに見えやすくなります。

その後、研修、実践、振り返りを設計します。研修で学ぶ、仕事で試す、1on1で振り返る、必要に応じて相談窓口やキャリアコンサルティングにつなぐ、という流れを作ります。学び直しは、教室で完結するものではなく、職場で使って初めて意味を持ちます。

最後に、効果を確認します。受講率や満足度だけでなく、学んだ内容を使った業務、本人のキャリア意識、上司との対話、役割付与、職場改善への貢献を見ます。人事施策としては、キャリア開発研修、管理職研修、相談窓口、リスキリングを一体で見た方が成果につながりやすくなります。

対象者別に設計すると、リスキリングは受講後に残ります

リスキリングやアンラーンは、全社員に同じ内容を配るよりも、対象者別に設計した方が実務に残ります。若手社員、中堅社員、管理職候補、ベテラン層では、学び直しに対する不安も目的も異なります。誰に何を学んでもらうかだけでなく、その人がどの役割で使うかまで決めることが大切です。

若手社員には、学び直しを成長実感につなげます。新しいスキルを学ぶ理由が見えないと、研修は作業になります。キャリア面談で、今の仕事で面白いと感じた経験、これから試したい業務、身につけたい力を整理し、研修後に小さな実践機会を渡すと、学びが自分ごとになります。

中堅社員には、役割の広がりを扱います。担当業務に慣れている一方で、次の成長機会が見えにくくなる時期です。リスキリングを、新しいスキルを足すだけでなく、プロジェクト推進、後輩育成、部署横断の調整、顧客課題の整理など、役割拡張と結びつけます。

管理職候補には、マネジメントに必要なアンラーンが重要です。プレイヤーとして成果を出すやり方と、部下を通じて成果を出すやり方は違います。自分で抱える、正解を教える、短期成果だけを見るといった癖を見直し、対話、任せ方、フィードバックを学ぶ必要があります。

ベテラン層には、経験の再編集が必要です。これまでの知識を否定するのではなく、どの経験を次世代に渡すか、どの経験を新しい業務に転用するか、何を手放すかを整理します。学び直しを、能力不足の補修ではなく、次の貢献の設計として扱うことが重要です。

このように対象者別に設計すると、研修の文言も変わります。全員に「リスキリングしましょう」と伝えるより、「次の役割で使うために何を学ぶか」「今までの経験をどう活かし直すか」と説明する方が、本人の納得感が高まります。

制度として運用する場合は、学習履歴だけを管理するのではなく、学びを使った経験を記録します。どの研修を受けたか、どの業務で試したか、上司とどのように振り返ったか、次に何を学ぶかをつなげると、リスキリングが人材育成の実績として残ります。記録は評価のためだけでなく、本人が次のキャリア面談で振り返れる材料として残すと運用しやすくなります。

相談窓口やキャリアコンサルティングを組み合わせると、本人が学び直しに感じている不安を扱いやすくなります。特に、職場で弱音を見せにくい管理職やベテラン層は、上司や部下には言いにくい悩みを抱えることがあります。外部相談を設けることで、本人の納得感を高めながら次の行動へ進めます。

人事が確認したいのは、学習施策がキャリア形成に結びついているかです。受講率が高くても、配置、評価、面談、役割付与とつながっていなければ成果は限定的です。アンラーンとリスキリングを、キャリア開発、管理職研修、ベテラン研修、エンゲージメント向上の施策と一体で設計することが重要です。

導入初期は、対象者を絞って小さく始めると運用しやすくなります。たとえば、管理職候補向けに面談スキルとアンラーンを扱う、ベテラン層向けに専門性継承と学び直しを扱う、若手向けにキャリア自律とリスキリングを扱うなど、課題に近い層から始めることで、研修後の実践機会を設計しやすくなります。

対象主な課題設計する支援
若手社員成長実感が見えにくい小さな実践機会と上司の1on1
管理職候補プレイヤー行動から抜けにくい任せ方・対話・フィードバックの研修
ベテラン層経験の使い道が固定化する専門性継承と役割再設計の面談

よくある質問

アンラーンとは何ですか?

過去の経験を否定することではなく、これまでの前提や仕事の進め方を見直し、新しい役割に合わせて使い方を更新することです。

リスキリングとは何ですか?

新しい業務や役割に必要なスキルを学び直す取り組みです。研修受講だけでなく、実際の仕事で使う機会まで設計する必要があります。

ベテラン社員にも必要ですか?

必要です。経験を活かしながら、後進育成、専門性継承、新しいツール活用、役割再設計につなげることで、働きがいを維持しやすくなります。

キャリア面談とどうつなげますか?

本人の経験、今後の希望、組織の期待を整理し、何を学ぶか、どの仕事で試すか、いつ振り返るかを面談で決めます。

研修効果はどう測りますか?

受講率だけでなく、実践機会、上司との1on1、役割付与、本人のキャリア意識、職場での行動変化を見ます。

参考文献

  1. 厚生労働省「職場における学び・学び直し促進ガイドライン」
  2. 経済産業省「人的資本経営 人材の価値を最大限に引き出す」
  3. 厚生労働省 令和6年度「能力開発基本調査」の結果について

著者プロフィール

CAREERBALANCE

株式会社キャリアバランス

キャリアコンサルタント、1級キャリアコンサルティング技能士、公認心理師など、全員が国家資格を保有するカウンセラー・講師チームが、企業内キャリア相談室の立ち上げ・運用支援、キャリア開発研修、管理職向け面談研修、メンタルヘルス対策を支援しています。

キャリアコンサルタント1級キャリアコンサルティング技能士公認心理師キャリア面談相談室運用
専門家紹介を見る
← コラム一覧に戻る

CONTACT

お問い合わせ


カウンセリングやスーパーバイズ、キャリア教育、教育研修プログラムのご相談など人事・労務系についてお気軽にご相談ください。また、弊社創業者「弓 ちひろ」への取材依頼もこちらからお願い申し上げます。

お問い合わせ

※弊社ではお取引先企業ごとに状況をお伺いしながらオリジナルの仕組みやその会社独自の研修プログラムのご提供・ご提案をしておりますので、他社向けに作成したプログラムのご提供依頼や相見積もりのためのお見積依頼にはご要望には沿うことができませんので、誠に申し訳ございませんが、予めご了承の程お願い申し上げます。ほか、営業のお問合せにつきましては、ご対応させて頂く余裕がなくご返信はできませんので大変恐縮でございますが、ご理解の程何卒宜しくお願い申し上げます。