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セルフ・キャリアドックを形骸化させない運用|面談後の報告・組織活用・継続改善

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面談を実施して終わりにせず、報告と改善までつなげる


監修:株式会社キャリアバランス

イメージ写真:セルフ・キャリアドックの面談後の報告と組織活用を検討する会議室
面談後の報告と組織的活用を検討するための会議室

セルフ・キャリアドックの成果は、面談を何人に実施したかではなく、面談のあとに何が起きたかで決まります。形骸化する制度に共通するのは、面談の実施自体が目的になり、結果の報告、本人のフォロー、組織側の改善が設計されていないことです。このページでは、導入済みの企業やこれから運用を固めたい人事の方に向けて、面談後のフォローアップの実務を、個人を特定しない結果報告、個別フォロー、組織的な改善措置、効果の確認、年次の継続改善の順で解説します。

セルフ・キャリアドックのフォローアップとは
セルフ・キャリアドックのフォローアップとは、キャリアコンサルティング面談の実施後に、個人の守秘を守りながら結果を組織へ報告し、本人への支援と組織側の改善を続ける工程です。制度の定義や導入手順の全体像は、セルフ・キャリアドックとは何かを解説した記事で整理しています。

形骸化は「実施率は高いのに何も変わらない」状態から始まります

セルフ・キャリアドックが形だけになるとき、最初に見えるのは面談実施率の低下ではありません。むしろ初年度は対象者が案内どおり面談を受け、実施率だけを見れば順調に見えることが多いものです。問題は、その後です。面談で語られた内容がどこにも活かされず、本人の仕事にも組織の施策にも変化がないと、従業員は「話しても何も変わらない」と学習します。二年目以降に予約が伸びない、対象者が日程調整に応じない、面談時間が短くなるといった変化は、その学習の結果として表れます。

もう一つの典型は、報告書が読まれていない状態です。面談を外部に委託し、実施報告を受け取って保管しているものの、経営層や現場の施策に接続されていないケースは少なくありません。この場合、制度は動いているように見えて、実際には面談と組織の間の回路が切れています。

逆方向の崩れ方もあります。上司や人事が面談の中身を知りたがり、誰が何を話したかを推測したり、本人に聞き出そうとしたりする状態です。こうなると従業員は本音を話さなくなり、面談は当たり障りのない時間になります。守秘が守られない制度は、実施され続けても機能しません。

兆候背景にあること見直す場所
2年目から予約・参加が減る面談後に何も起きず「話しても変わらない」と学習された個別フォローと組織側の改善措置
報告書が保管されるだけになる報告の宛先・活用方法・担当が決まっていない結果報告の設計と経営への接続
面談が雑談・ガス抜きと呼ばれる面談の目的と後工程が社内に説明されていない社内説明と面談後の行動設計
上司が面談内容を知りたがる守秘の線引きと上司の役割が共有されていない情報共有ルールと上司向けの説明

フォローアップは標準プロセスの最終工程であり、次の一周の起点です

厚生労働省の「セルフ・キャリアドック」導入の方針と展開では、導入・実施の流れが、人材育成ビジョン・方針の明確化、実施計画の策定、企業内インフラの整備、セルフ・キャリアドックの実施、そしてフォローアップという順で整理されています。フォローアップの中身として挙げられているのは、結果の報告、個々の対象従業員に係るフォローアップ、組織的な改善措置の実施、継続的改善です。※1 つまり、面談をやり切ることは工程の途中であり、報告と改善までを含めて一周と考えるのが標準の設計です。

この一周の視点が重要なのは、キャリアコンサルティングの機会をつくること自体は出発点にすぎないためです。職業能力開発促進法は、労働者が自ら職業生活設計を行い、自発的に職業能力の開発に努める立場であることを踏まえ、事業主が講ずる措置としてキャリアコンサルティングの機会の確保その他の援助を位置づけています。※2 機会を用意した企業の次の課題は、その機会から得られたものを本人の行動と組織の改善につなげる仕組みです。

ビジョンの明確化から実施計画、社内インフラ、面談当日の運営までの設計は、導入の全体像を解説した記事に譲ります。本記事では、面談が終わったあとの工程に絞って、実務の順序を追っていきます。

結果報告は「個人が特定されない傾向」に絞り、宛先と用途を決めます

フォローアップの起点は、面談結果の全体報告です。ここでの原則ははっきりしています。報告するのは組織の傾向であり、個人の発言ではないということです。誰が何を話したかを人事や上司に伝える報告は、守秘の約束を破り、制度全体の信頼を失わせます。一方で、何も報告しなければ、面談は組織から見えない活動になり、投資判断も改善もできません。個人を守りながら組織に材料を渡す、その両立が報告設計の目的です。

実務では、まず報告の宛先と用途を決めます。経営層には人材育成の投資判断に使える要約を、人事には施策の見直しに使える傾向と提言を、それぞれ年次や半期の節目で届けます。次に、個人が特定されない集計単位を決めます。少人数の部署をそのまま集計すると個人が推測できてしまうため、一定の人数に満たない区分は上位の区分へまとめるといった線引きを、報告を作る前に規程として定めておきます。緊急の例外、たとえば本人や周囲の安全に関わる相談があった場合に誰へどうつなぐかも、事前に決めておく事項です。

報告に載せる中身は、実施状況、相談テーマの傾向、組織への提言の三層で構成すると読み手に伝わります。実施状況は対象者数、実施数、対象層です。傾向は、たとえば「若手では成長実感に関する相談が多い」「中堅では役割の固定化への停滞感が語られる」といった粒度でまとめます。提言は、傾向から考えられる組織側の打ち手の候補です。ここまで書いて初めて、報告書は保管される書類ではなく、次の施策の材料になります。

区分報告に載せるもの報告に載せないもの
実施状況対象者数、実施数、対象層、実施時期個人別の受講・未受講の一覧
相談の傾向一定人数以上の区分で集計したテーマの傾向発言の引用、個人が推測できる少人数区分の集計
提言傾向から見た組織課題の仮説と打ち手の候補特定個人への評価・処遇に関する意見
イメージ写真:面談結果の報告書と改善計画を整理する打ち合わせスペース
報告と改善計画を整理する打ち合わせスペース

個別フォローは「本人が動けたか」を確かめる工程です

全体報告と並行して、面談を受けた本人への個別フォローを設計します。面談の終わりに、本人が次に試したい行動を一つか二つ整理していても、職場に戻れば日常の業務が優先されます。数週間後に振り返る機会がなければ、面談の気づきは自然に薄れていきます。次回面談の予定、簡単な振り返りシート、キャリア研修とセットの事後ワークなど、本人が自分の計画を思い出す接点を用意します。

上司との連携は、フォローの中で最も設計を誤りやすい部分です。原則は、面談の内容を上司へ直接共有しないことです。そのうえで、本人が上司に伝えたいこと、たとえば挑戦したい仕事や学びたい領域を、本人が自分の言葉で伝えられるように面談内で整理します。上司側には、部下から相談があったときの受け止め方と、経験を渡す支援の仕方を、管理職向けの研修や説明会で別途伝えます。本人経由の対話を基本にすることで、守秘と職場での実行の両方が成り立ちます。

また、キャリアの相談の中には、キャリアの枠を超えるテーマが含まれることがあります。心身の不調、ハラスメント、家庭との両立の困難などが語られた場合に、産業保健スタッフや社内外の相談窓口へどうつなぐかは、面談担当者任せにせず、あらかじめ経路を決めておきます。社内相談窓口の整備方法で扱っているように、キャリア相談と他の相談機能の役割分担が明確なほど、リファーは速く安全になります。

組織的な改善措置は、傾向を「担当と期限のある施策」に変換します

報告書に書かれた傾向は、それだけでは変化を生みません。フォローアップの核心は、傾向を担当と期限のある施策へ変換することです。たとえば、若手の面談で成長実感の乏しさが繰り返し語られるなら、育成計画と仕事の任せ方を見直す施策が候補になります。中堅層で役割の固定化への停滞感が目立つなら、役割拡張や学び直しの機会を設計します。管理職候補の層で昇進への不安が多いなら、管理職の仕事の実像を伝える機会や、上司向けのキャリア支援研修のような支援を検討します。

このとき大切なのは、面談から見えた傾向を「仮説」として扱うことです。面談に来た人の声が組織全体を代表しているとは限りません。従業員調査や退職理由、相談窓口の利用状況など他の情報と突き合わせ、仮説の確からしさを確かめてから施策の優先順位を決めると、的外れな対策を避けられます。

変換の実務は、シンプルな管理表で足ります。傾向、対応する組織課題の仮説、打ち手、担当部署、期限、確認時期を一行ずつ並べ、人事の定例で進捗を確認します。すべての傾向に施策を割り当てる必要はありません。今期は二つか三つに絞って確実に実行し、実行したことを従業員に伝える方が、施策を並べて動かないより信頼を生みます。改善が実行されたと分かったとき、従業員にとって面談は「話すと何かが変わる場」になります。

面談から見える傾向の例組織課題の仮説打ち手の候補
若手から成長実感への不安が多い仕事の任せ方と育成計画が機能していない育成計画の見直し、上司の1on1の質の向上
中堅から停滞感・役割固定の声が多い役割拡張と学び直しの機会が不足している兼務・異動の仕組み、リスキリング機会の設計
管理職候補から昇進への不安が多い管理職の役割の実像と支援が伝わっていない管理職向け研修、メンター、役割の再設計
両立に関する不安が多い制度はあるが使われ方が知られていない制度周知の改善、復帰前後の面談の追加

効果の確認は、実施率ではなく行動と改善の実行で見ます

フォローアップまで含めて運用すると、効果の確認に使える指標が増えます。実施率や満足度は入口の指標であり、それだけでは「面談が行われた」ことしか分かりません。運用の質を見るには、面談後に本人が決めた行動が試されたか、上司との対話が実際に行われたか、報告書の提言のうち何件が施策として実行されたかという、行動と実行の指標を加えます。

組織側の変化は、時間差をおいて表れます。相談窓口の利用のされ方、従業員調査のキャリアに関する項目、若手の定着や社内公募への応募状況などは、面談単体の成果ではなく、フォローアップを含む制度全体の成果として、複数年の傾向で見ます。単年度の数値で成否を断定すると、短期で測れる指標だけを追う運用に歪みやすいため、確認の時期と判断の基準をあらかじめ年次計画に書いておきます。

数値と同じくらい、定性の確認も重要です。面談を受けた本人が「整理できた」「次に何を試すか決められた」と感じているか、上司が部下のキャリアの話題を扱いやすくなったと感じているか。こうした声は、制度が信頼されているかどうかを最も早く教えてくれます。数値の指標と現場の声の両方がそろって、初めて改善の方向を誤らずに済みます。

継続的改善は、対象と道具を毎年少しずつ更新することです

セルフ・キャリアドックは、一度設計したら終わりの制度ではありません。年次のサイクルとして、今年の結果報告と改善措置の実行状況を振り返り、来年度の対象層、研修内容、面談で使うシート、報告の形式を見直します。対象層は毎年同じである必要はなく、初年度は若手、翌年は中堅や管理職候補というように、課題の大きい層から順に広げる設計が現実的です。

面談を外部のキャリアコンサルタントに委託している場合は、年度の切り替え時に運用の引き継ぎ品質も確認します。守秘の範囲、報告の形式、リファーの経路、シートの改訂履歴が引き継がれているか。担当者が替わるたびに運用がぶれる状態は、従業員からの信頼を少しずつ削ります。企業内キャリアコンサルタントの配置や外部委託との併用を含め、誰がこの制度の運用に責任を持つのかを毎年確認しておきます。

継続の判断で迷ったら、次のチェックリストで現状を確かめてください。すべてを一度に満たす必要はありませんが、どこが欠けているかを知ることが、立て直しの出発点になります。

  1. 面談結果が、個人を特定しない形で年次の報告にまとまっている
  2. 報告の宛先と、施策への反映を判断する場が決まっている
  3. 面談を受けた本人に、振り返りの接点が用意されている
  4. 上司への共有は本人経由が原則になっている
  5. 報告の提言から、担当と期限のある施策が生まれている
  6. 効果の確認時期と指標が年次計画に書かれている

よくある質問

面談の結果は、誰にどこまで報告できますか?

個人が特定されない形に集計した全体傾向として、経営層や人事へ報告します。誰が何を話したかは報告せず、報告してよい範囲と例外対応は面談を始める前に規程として決めておきます。

フォローアップは誰が担当しますか?

全体の進行と組織側の改善は人事・事務局が担当します。本人の行動支援は上司が、守秘性の高い継続相談はキャリアコンサルタントが担い、三者の役割を分けて設計します。

面談の内容を上司に共有してもよいですか?

原則として共有しません。上司に伝えたいことは本人が自分の言葉で伝えられるよう面談内で整理し、本人の同意がある場合に限り、合意した範囲だけを共有します。

効果はいつ、どのように判断すればよいですか?

実施率や満足度だけでなく、面談後の行動、上司との対話、組織側の改善措置の実行状況を合わせて確認します。単年度で断定せず、複数年のサイクルで判断します。

形骸化してしまった制度は立て直せますか?

立て直せます。全社一律の運用をいったん止め、課題が明確な階層に対象を絞り、報告と改善措置まで含めた小さなサイクルを一周させてから広げ直す方法が現実的です。

参考文献

  1. 厚生労働省「セルフ・キャリアドック」導入の方針と展開
  2. e-Gov法令検索「職業能力開発促進法」
  3. 厚生労働省「キャリアコンサルティング・キャリアコンサルタント」

著者プロフィール

CAREERBALANCE

株式会社キャリアバランス

キャリアコンサルタント、1級キャリアコンサルティング技能士、公認心理師など、全員が国家資格を保有するカウンセラー・講師チームが、企業内キャリア相談室の立ち上げ・運用支援、キャリア開発研修、管理職向け面談研修、メンタルヘルス対策を支援しています。面談の実施は、国家資格であるキャリアコンサルタントが担います。※3

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