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企業内キャリアコンサルタントとは?社内での役割・外部委託との違い・導入方法

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企業内キャリアコンサルタントを、資格者の配置だけで終わらせないために


監修:株式会社キャリアバランス

イメージ写真:企業内キャリアコンサルタントがオンラインで従業員面談を行う様子
企業内キャリアコンサルタントによるオンライン面談のイメージ

企業内キャリアコンサルタントとは、企業で働く人の職業生活設計、能力開発、役割の変化、今後の働き方を対話によって整理し、次の行動につなげるキャリアコンサルタントです。社内の有資格者が担当する場合も、外部の専門家が企業内の相談窓口を受託する場合もあります。「企業内」は活動領域を示す呼び方であり、別の国家資格名ではありません。

人事担当者からは、「社内にキャリアコンサルタント資格を持つ社員がいれば十分なのか」「上司の1on1や人事面談と何が違うのか」「外部委託すると社内事情が分からないのではないか」といった疑問がよく出ます。重要なのは資格者を置くこと自体ではなく、誰が、どの相談を、どの範囲まで受け止め、必要に応じて人事・上司・産業保健へどうつなぐかを設計することです。

この記事では、企業内キャリアコンサルタントの定義と役割、社内配置・外部委託・併用型の違い、守秘と情報共有、導入手順、運用指標までを人事実務の観点から整理します。

企業内キャリアコンサルタントとは

キャリアコンサルタントは、職業の選択、職業生活設計、職業能力の開発・向上に関する相談に応じ、助言や指導を行う専門家です。厚生労働省は、企業、需給調整機関、教育機関、若者自立支援機関などを主な活動領域として挙げています。また、登録を受けた者だけが「キャリアコンサルタント」と名乗れる名称独占の国家資格で、守秘義務が課されています。※1

そのうち、企業の中で従業員支援に携わる人を実務上「企業内キャリアコンサルタント」と呼びます。自社の人事部門やキャリア開発室に所属する社員が担当する場合、兼務の有資格者が相談を受ける場合、外部のキャリアコンサルタントが社内相談室へ配置される場合があります。呼び方が同じでも、雇用形態と権限、情報へのアクセス、評価との距離は異なるため、導入時には担当者の立場を明示する必要があります。

厚生労働省は、キャリアコンサルティングによって自己理解、仕事理解、職業上の目標設定や能力開発を支援できると説明しています。※2 企業内で行う場合は、対話で得た気づきを、本人が職場で試せる経験、学習、役割調整、上司との対話へ接続できる点に特徴があります。

なぜ企業内でキャリア相談の専門家が必要になるのか

従業員のキャリアの悩みは、「次にどの部署へ行きたいか」だけではありません。仕事の意味が見えない、管理職になることに不安がある、家庭との両立を考えたい、ベテラン期の役割を再設計したい、学び直しを求められたが方向が分からないなど、仕事と生活の双方にまたがります。こうした話題は、評価者である上司や異動を扱う人事には率直に話しにくいことがあります。

上司がキャリア面談を担うことは重要です。日常の仕事を知り、本人へ経験を与えられるのは上司だからです。ただし、上司には評価・目標管理・業務遂行の責任があり、部下の迷いをすべて中立的に扱うことは容易ではありません。人事も制度や配置を動かせますが、相談者が「話した内容が異動や評価に影響するのでは」と感じれば、本音は出にくくなります。

企業内キャリアコンサルタントは、本人の経験、価値観、強み、役割への期待、生活上の制約を整理し、本人が選択肢を考えるための対話を担います。答えを代わりに決めるのではなく、相談者が自分の言葉で状況を理解し、次に試す行動を決められるよう支援します。そのうえで、本人が希望する場合は、上司との対話、人事制度、研修、社内公募、学習機会などへつなぎます。

人事・上司・産業保健・EAPとの役割の違い

相談制度が機能しない原因の一つは、窓口が多いのに役割が分からないことです。「上司へ相談する内容」「人事へ申請する内容」「キャリア相談で整理する内容」「心身の不調として専門職へつなぐ内容」を分けて案内すると、従業員は早い段階で相談しやすくなります。

担当主な役割企業内キャリアコンサルタントとの連携
人事担当者人事制度、配置、異動、育成施策、労務対応を運用する。個別相談の内容ではなく、本人同意のある申請や個人を特定しない相談傾向を受け取り、制度改善へつなぐ。
上司日常業務の支援、目標設定、評価、役割付与、経験機会の提供を担う。相談者が整理した希望を、本人の同意のもとで仕事上の挑戦や1on1のテーマへ変える。
企業内キャリアコンサルタント経験・価値観・能力・今後の働き方を対話で整理し、本人の意思決定と行動を支える。必要に応じて研修、上司との対話、人事制度、産業保健等への橋渡しを行う。
産業医・保健職・公認心理師等心身の健康、就業上の配慮、心理的支援など、それぞれの専門領域を扱う。医療的判断や心理支援が必要な場合は、定めた手順に沿って適切な専門職へつなぐ。
EAP・外部相談窓口社外の立場から、契約範囲に応じて心理・キャリア・生活上の相談等を受ける。企業内相談室と相談範囲が重なる場合は、入口、記録、報告、緊急時対応を整理する。

キャリアコンサルタントは医療的な診断や治療を行う立場ではありません。相談の中で強い不調や安全上の懸念が見えた場合に、本人へ説明し、産業医、保健職、医療機関、公認心理師、社内の緊急連絡先などへ適切につなげられる運用が必要です。担当者一人に全領域を抱えさせないことが、相談者と担当者の双方を守ります。

社内配置・外部委託・併用型の選び方

企業内キャリアコンサルタントの配置方法は、大きく社内配置、外部委託、併用型に分けられます。会社規模だけで決めるのではなく、相談者が評価との距離をどう感じるか、必要な専門性を社内で確保できるか、相談件数が変動したときに対応できるかで選びます。

配置方法強み注意点
社内配置自社制度や職場事情を理解しやすく、日常的な案内や施策連携を行いやすい。兼務者が評価・配置業務も担う場合、相談者が本音を話しにくい。相談記録と人事情報の分離が必要。
外部委託中立性と守秘性を伝えやすく、必要な人数・専門性を確保しやすい。自社制度への理解が浅いままでは助言が一般論になりやすい。導入時の組織理解と定例共有が必要。
併用型社内事情を知る担当者と、中立的な外部専門家の双方を活かせる。どちらへ相談するか分かりにくくなるため、相談範囲、引き継ぎ、情報共有のルールを一本化する。

社内配置に向くのは、すでに有資格者が複数おり、相談時間、記録管理、スーパーバイズ、研修機会を継続的に確保できる会社です。外部委託に向くのは、社内に専門人材がいない、相談件数の変動が大きい、評価や人間関係から距離を置いた窓口を明確にしたい場合です。併用型では、社内担当者が制度との接続や利用促進を担い、個別面談とスーパーバイズを外部が担う形が考えられます。

どの形でも、「相談を受ける人」と「配置・評価を決める人」の関係を説明することが重要です。同じ人が両方を担う場合は、相談として扱う情報と、人事手続きとして扱う情報を明確に分け、相談者へ事前に伝えます。

相談傾向を個人が特定されない形で集計し人事施策へつなぐレポート設計のイメージ
個人を特定しない相談傾向レポートの設計イメージ

守秘と情報共有をどう設計するか

企業内キャリア相談で最も信頼に影響するのは、「話した内容が誰に伝わるか」です。国家資格キャリアコンサルタントには守秘義務があります。※1 しかし、資格者個人の守秘だけに頼らず、会社として相談記録、予約情報、報告資料、緊急時連携をどう扱うかを決める必要があります。

通常の運用では、本人の同意なく個別相談内容を人事や上司へ共有しないことを原則とします。会社へは、個人が特定されない件数、対象層、相談テーマの傾向、制度上のつまずき、今後必要な研修や案内といった情報を返します。本人が異動相談、就業上の配慮、上司との調整などを希望する場合は、何を誰へ伝えるかを本人と確認してから連携します。

一方で、生命・身体への重大な危険が疑われる場合や、法令等に基づく対応が必要な場合は、通常の守秘運用だけでは対応できません。相談開始前に例外条件と連携先を説明し、担当者が一人で判断しないエスカレーション手順を用意します。従業員向け案内には、相談できるテーマだけでなく、「共有しない情報」「同意がある場合に共有できる情報」「緊急時の例外」を分かりやすく記載します。

記録も必要最小限にします。面談メモを評価資料や通常の人事データベースへ混在させず、アクセス権限、保存期間、廃棄方法を定めます。予約担当者が知る情報と、面談担当者が扱う情報を分けることも、利用者の安心につながります。

導入を進める7つの手順

  1. 経営・人事課題を言語化する:若手離職、管理職候補育成、女性活躍、ベテラン層の役割再設計、メンタルヘルス予防など、相談制度で扱う課題を決めます。
  2. 対象者と利用場面を決める:全社員が随時利用する窓口か、入社・昇格・異動・復職・定年前後など節目の面談かを整理します。
  3. 担当者の立場を決める:社内配置、外部委託、併用型のいずれにするか、評価・配置業務との距離を含めて決めます。
  4. 相談範囲と連携先を定める:キャリア相談で扱う範囲、産業保健・労務・ハラスメント窓口へつなぐ基準、緊急時の連絡先を明文化します。
  5. 守秘・記録・報告ルールを作る:個別情報の扱い、本人同意、匿名化した傾向報告、記録保存を設計します。
  6. 予約と周知の導線を整える:相談方法、予約ページ、相談例、利用時間、会社へ共有される範囲を案内し、研修や1on1後にも紹介します。
  7. 試行して改善する:対象部署や対象層を絞って始め、利用者の声、相談傾向、連携上の課題を確認してから広げます。

厚生労働省は、企業におけるキャリア形成支援策としてセルフ・キャリアドックを紹介しています。これは、従業員のキャリアの節目に、キャリアコンサルティング面談と研修等を組み合わせ、体系的・定期的に支援する仕組みです。※3 随時利用できる相談室と節目ごとのセルフ・キャリアドックを組み合わせると、困りごとの早期相談と計画的なキャリア形成支援を両立しやすくなります。

厚生労働省委託のセルフ・キャリアドック普及サイトでは、キャリアコンサルタントが経営者や人事部門と連携して計画を策定すること、社内キャリアコンサルタントへスーパーバイズを行うことも示されています。※4 つまり、個別面談だけでなく、制度設計、面談品質、社内施策への接続までが運用の対象です。

担当者・外部委託先を選ぶときの確認項目

担当者選びでは、国家資格の有無を確認したうえで、企業内支援の経験と運用能力を見ます。個人向けの相談経験が豊富でも、企業内では守秘と組織報告の両立、評価者との距離、産業保健との連携、研修や制度改善への接続が必要です。

資格と継続学習キャリアコンサルタント登録の確認に加え、面談技能、企業領域、メンタルヘルス予防など必要な専門性を継続的に学んでいるか。
企業支援の経験人事制度、管理職支援、キャリア開発研修、相談室運営を理解し、個人支援と組織施策を分けて考えられるか。
守秘と緊急時対応本人同意、記録管理、匿名レポート、産業保健・人事への連携基準を説明できるか。
スーパーバイズ難しい相談を担当者一人で抱えず、事例をもとにスーパーバイズを行い、面談品質を継続的に見直せるか。
運用提案予約、社内周知、利用促進、傾向分析、管理職研修など、相談開始後の仕組みまで提案できるか。

外部委託の場合は、登録者の人数だけでなく、実際に担当する人の経験、欠員時の代替、担当者変更の条件、レポートの粒度、定例会の頻度を確認します。「相談を何件実施するか」だけで比較すると、制度設計や社内への還元が抜けやすくなります。

導入後の運用と見るべき指標

相談窓口の成果を利用件数だけで判断すると、運用を誤ることがあります。件数が少ない理由は、悩みが少ないからではなく、窓口が知られていない、何を相談できるか分からない、会社へ伝わると思われている、予約しづらいなど複数あります。反対に件数が増えた場合も、認知が進んだのか、組織課題が深刻化したのかを相談テーマと合わせて見ます。

  • 認知と利用:対象者への認知率、予約導線からの離脱、対象層別の利用状況
  • 相談のタイミング:問題が深刻化する前に相談できているか、入社・異動・昇格・復職・定年前後に利用されているか
  • 面談後の変化:考えが整理されたか、次の行動が決まったか、上司や人事との対話へ進めたか
  • 組織課題への還元:個人を特定しない相談傾向から、研修、制度、社内案内、管理職支援を改善できたか
  • 連携の品質:産業保健・人事・外部機関へ必要なケースを適切につなげられたか

月次や四半期の定例会では、相談の中身を詳しく報告するのではなく、対象層、テーマ、相談時期、制度上のつまずき、周知上の課題を確認します。たとえば「管理職候補が昇格後の役割をイメージできない」「育児期の社員が長期的なキャリアを相談できる相手を探している」といった傾向が見えたら、管理職研修、女性活躍推進、キャリア開発研修、制度案内へ反映します。

社内の担当者にも振り返りが必要です。面談で扱いに迷った事例、相談者との距離、質問の偏り、リファー判断などを、個人情報を守った形でスーパーバイズし、対応品質を整えます。相談制度は設置して終わりではなく、担当者育成と運用改善を継続して初めて社内インフラになります。

よくある失敗と防ぎ方

一つ目は、資格者を任命しただけで時間と権限を与えないことです。通常業務の合間に相談を受ける形では、予約枠、記録、フォロー、社内連携が不安定になります。担当時間、相談場所、オンライン環境、スーパーバイズ予算を業務として確保します。

二つ目は、人事面談とキャリア相談の違いが伝わっていないことです。相談者が評価面談だと受け取れば、困りごとや迷いは話せません。目的、守秘、利用方法、相談例を具体的に案内し、管理職にも相談窓口を部下へ紹介する方法を伝えます。

三つ目は、外部委託先へ任せきりにすることです。外部専門家は中立的な面談を担えますが、社内制度を変える権限はありません。人事が定例会に参加し、個人を特定しない相談傾向を研修、配置育成、制度案内へ反映する必要があります。

四つ目は、相談範囲を広げすぎることです。キャリア、メンタルヘルス、ハラスメント、労務、法律の相談は重なることがありますが、担当できる専門性と権限は異なります。どの窓口が何を扱い、どの状態でどこへつなぐかを一覧にしておきます。

五つ目は、利用率だけを目標にすることです。件数を増やすことが目的になると、相談の質や組織改善への接続が見えなくなります。早期相談、行動の明確化、適切な連携、制度改善までを評価対象に含めます。

キャリアバランスで支援できること

株式会社キャリアバランスでは、企業内キャリア相談室の立ち上げ・運用支援として、目的整理、相談範囲、守秘ルール、予約導線、外部キャリアコンサルタントの配置、相談記録、個人を特定しない傾向分析レポートまで、相談室の設計と運用を支援します。

加えて、社内カウンセラー育成や、個人情報を守った事例をもとにしたスーパーバイズを通じ、担当者の対応品質と運用改善を支えます。節目ごとの面談と研修を体系化する場合はセルフ・キャリアドックの考え方を取り入れ、管理職が日常の対話を担う場合は上司向けキャリア面談研修を組み合わせます。社内配置、外部委託、併用型のどれが適切か決まっていない段階でも、現在の相談窓口、人事制度、対象者、社内の有資格者の状況から整理できます。

よくある質問

Q. 企業内キャリアコンサルタントとは何ですか?

企業で従業員のキャリア相談や面談、研修、相談制度の運用を担う国家資格キャリアコンサルタントです。「企業内」は活動領域を示す呼び方で、別の国家資格名ではありません。

Q. 人事担当者や上司との違いは何ですか?

人事は制度と配置、上司は日常の業務支援、キャリアコンサルタントは本人の経験・価値観・今後の選択を整理する対話を担います。役割と情報共有範囲を分けて連携します。

Q. 社内配置と外部委託はどちらがよいですか?

日常的な接点と社内事情の理解を重視するなら社内配置、守秘性・中立性・専門人材の確保を重視するなら外部委託が向きます。併用も可能です。

Q. 相談内容は会社へ共有されますか?

本人の同意なく個別内容を共有しないことを原則とし、会社には個人が特定されない相談傾向や制度改善上の論点を報告する設計が基本です。

Q. 企業内キャリア相談室とセルフ・キャリアドックの違いは何ですか?

相談室は必要な時に利用できる継続的な窓口、セルフ・キャリアドックは節目ごとの面談と研修を体系的・定期的に行う仕組みです。両者を組み合わせられます。

Q. 導入時に最初に決めることは何ですか?

目的、対象者、相談範囲、予約方法、守秘ルール、緊急時の連携先、会社へ返すレポートの範囲を決め、社内案内と試行期間を設けます。

参考文献

  1. 厚生労働省「キャリアコンサルティング・キャリアコンサルタント」
  2. 厚生労働省「キャリアコンサルティングの活用・効果」
  3. 厚生労働省「企業・学校等においてキャリア形成支援に取り組みたい方へ」
  4. 厚生労働省委託事業「セルフ・キャリアドックとは」

著者プロフィール

CAREERBALANCE

株式会社キャリアバランス

キャリアコンサルタント、1級キャリアコンサルティング技能士、公認心理師など、全員が国家資格を保有する専門家チームとして、企業内キャリア相談室の立ち上げ・運用支援、キャリア開発研修、管理職向け面談研修、メンタルヘルス対策を支援しています。

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